楽しみにしていた海外旅行でも、「到着後に預け荷物が出てこなかったらどうしよう」と不安になる方は少なくありません。とくに乗り継ぎ便を利用する場合や、久しぶりに国際線へ乗る場合は、ロストバゲージへの不安が大きくなりやすいものです。
ロストバゲージに遭遇する可能性をゼロにすることはできません。しかし、事前に対策しておけば、荷物トラブルのリスクを下げられるだけでなく、万が一の際も現地で慌てずに手続きできます。
本記事では、ロストバゲージを防ぐための事前対策と、荷物が届かなかった場合に英会話なしで進められる対処法を解説します。
スーツケースの準備、チェックイン時の確認、空港カウンターでの手続きまで把握しておけば、言葉が通じにくい海外でも冷静に対応可能です。不安を減らして海外旅行を楽しむためにも、出発前にできる対策を確認しておきましょう。
ロストバゲージの原因と発生確率

ここではロストバゲージの主な原因と発生する確率について解説します。
- ロストバゲージは主に乗り継ぎ時に起きる
- 年間3000万個超の荷物がトラブルに遭遇
ロストバゲージは主に乗り継ぎ時に起きる
ロストバゲージの主な原因は、乗り継ぎ時の荷物の積み替えトラブルです。SITAの2025年レポートでは、遅延手荷物の要因のうち、乗り継ぎ時の取り扱いミスが41%を占めています。
乗り継ぎ便では、限られた時間のなかで荷物を次の便へ積み替えなければなりません。たとえば前便が遅延すると、乗客は次の便に間に合っても、荷物の積み替えが間に合わず積み残されることもあります。
さらに、複雑な乗り継ぎの過程では、手荷物タグの読み取りエラーや、作業員が誤って別のコンテナへ積み込むといった人為的ミスも少なくありません。
時間不足やシステムエラー、人為的ミスが重なることで、荷物だけが経由地に置き去りにされたり、異なる目的地へ送られたりする事態へ発展します。
年間3000万個超の荷物がトラブルに遭遇
SITAの2025年レポートによると、2024年の手荷物トラブル率は乗客1,000人あたり6.3個で、世界全体では3,340万個の荷物が何らかのトラブルに遭遇しています。
ただし、手荷物トラブルの多くは一時的な遅延です。実際に、SITA WorldTracerを通じて追跡された手荷物の66%は、48時間以内に持ち主へ返還されています。
ロストバゲージは誰にでも起こり得るトラブルですが、荷物が完全に戻らないケースばかりではありません。事前に原因と発生しやすい場面を知っておけば、次に紹介する予防策もより実践しやすくなります。
出典:» SITA Baggage IT Insights 2025(外部サイト)
ロストバゲージ対策!すぐにできる6つの予防策

ロストバゲージを完全に防ぐことはできませんが、出発前の準備でリスクを下げたり、万が一の被害を最小限に抑えたりできます。ここでは、航空券の予約時や出発前にできる6つのロストバゲージ対策を解説します。
- スマートタグ(AirTagなど)を荷物の中に入れる
- 古いタグはすべて剥がし、ネームタグを2つ装着する
- スーツケースの全体写真を撮り英文メモを作成しておく
- 1泊分の着替えと貴重品は機内に持ち込む
- 目立つスーツケースベルトを装着する
- 乗り継ぎ時間は最低2時間以上のゆとりを持つ
スマートタグ(AirTagなど)を荷物の中に入れる
iPhoneユーザーならAirTag、AndroidユーザーならTileなどのスマートトラッカーを荷物の中に入れておきましょう。荷物が見つからない場合に、おおよその位置をスマホで確認しやすくなるためです。
スマートトラッカーがあれば、航空会社に荷物の位置を伝える補助情報として役立ちます。ただし、位置情報が更新されるタイミングは空港や周辺環境によって異なります。GPSのように常に正確な場所をリアルタイムで追跡できるわけではない点には注意しましょう。
AirTagなどのスマートトラッカーは、一般的に預け荷物へ入れられるケースが多いです。ただし、航空会社や渡航先によって扱いが異なる可能性もあるため、利用する航空会社のルールを事前に確認しておくと安心です。
位置情報が把握できたからといって、すぐに荷物が手元へ戻るわけではありません。他の予防策も組み合わせながら、ロストバゲージに備えましょう。
古いタグはすべて剥がし、ネームタグを2つ装着する
前回のフライトで付けられたバーコードタグや、持ち手・側面に残った小さな管理シールはすべて剥がしましょう。空港の自動スキャナーが古い情報を読み取り、荷物が違う目的地へ送られる原因になる可能性があるためです。
また、素材の異なる2つのネームタグを装着しておくのもおすすめです。たとえば、革製とプラスチック製など、種類の違うタグを2カ所に付けておけば、片方が外れても荷物の持ち主を確認しやすくなります。
空港での荷物の取り扱いは想像以上に荒く、タグが1つだけでは摩擦や衝撃でちぎれる恐れがあります。ネームタグは、スーツケース本体の持ち手とサイドハンドルなど、別々の場所に付けておくと安心です。
ただし、ネームタグは名前や連絡先が外から丸見えにならないタイプを選びましょう。個人情報が露出していると、空港やホテルで悪用されるリスクがあります。めくらないと名前が見えないカバー付きのタグを選ぶのがおすすめです。
スーツケースの全体写真を撮り英文メモを作成しておく
荷物を預ける前に、スーツケースの全体写真を撮ってスマホに保存しておきましょう。正面・側面・持ち手・目印になる傷やステッカーなどを複数の角度から撮影しておくと、ロストバゲージ発生時に荷物の特徴を伝えやすくなります。
写真があれば、英語で細かく説明できなくても、現地スタッフに荷物の外観を一目で伝えられます。また、荷物が破損して届いた場合にも、預ける前の状態を示す証拠として役立ちます。
あわせて、荷物の特徴を英語でまとめたメモも用意しておきましょう。紛失届の提出時には、色、サイズ、ブランド、素材、特徴的な目印などを聞かれることがあります。
たとえば、「black hard suitcase」「large size」「red suitcase belt」「name tag on side handle」のように、簡単な英単語で問題ありません。滞在先のホテル名・住所・電話番号も英語で控えておけば、見つかった荷物の配送先を伝える際に役立ちます。
英語が苦手でも、写真とメモがあれば手続きの負担を大きく減らすことが可能です。言葉が通じにくい海外の空港でも、落ち着いて対応しやすくなります。
1泊分の着替えと貴重品は機内に持ち込む
ロストバゲージに備え、最低1日分の着替えや洗面用具、充電器は機内へ持ち込みましょう。荷物が遅れて届いた場合でも、手元に最低限の荷物があれば到着直後の不便や現地での急な出費を抑えられます。
とくに、パスポート、財布、スマートフォン、充電器、処方薬、貴重品は必ず機内へ持ち込んでください。日本と同じ処方薬を海外で調達するのは簡単ではありません。常備薬は一部だけでなく、全日程分を機内へ持ち込むと安心です。
化粧品などの液体物は100ml以下の容器に入れてください。国際線では、液体物を1L以下の透明なジッパー付き袋にまとめる必要があります。空港で慌てないためにも、出発前に持ち込みルールを確認しておきましょう。
同行者がいる場合は、荷物をそれぞれのスーツケースに分散して入れるのもおすすめです。家族や友人の荷物を少しずつ分けておけば、誰か一人のスーツケースが届かなくても、グループ全体のダメージを抑えられます。
見知らぬ土地で荷物を失うと、精神的な不安も大きくなります。1日分だけでも手元に備えがあれば、到着直後に買い出しへ走る必要がなくなり、初日から落ち着いて旅行を楽しめます。
目立つスーツケースベルトを装着する
他の乗客との取り違えを防ぐには、目立つスーツケースベルトの装着が効果的です。赤や黄色、オレンジなどの派手な色や、特徴的な柄のスーツケースベルトを選びましょう。
黒やネイビーなどの定番色のスーツケースは似たデザインが多く、他の乗客が自分の荷物と間違えて持ち帰るリスクがあります。目立つスーツケースベルトがあれば、ターンテーブル上でも自分の荷物を見つけやすくなります。
また、空港での荷扱いでは、本体に衝撃が加わることも珍しくありません。鍵やファスナーが壊れた場合でも、スーツケースベルトがあれば中身の飛び出しを防ぐ補助になります。
アメリカ方面へ渡航する場合は、TSA対応のスーツケースベルトを選ぶと安心です。TSA対応であれば、保安検査時に専用キーで解錠できるため、ベルトを破壊されるリスクを下げられます。
スーツケースベルトだけで航空会社側の誤送を完全に防げるわけではありません。しかし、取り違え防止や荷物の視認性アップには役立つため、出発前に用意しておきたい対策のひとつです。
乗り継ぎ時間は最低2時間以上のゆとりを持つ
乗り継ぎ便を利用する場合は、フライト予約の時点で最低2時間以上のゆとりを持つことが大切です。乗り継ぎ時間が短いと、乗客は次の便に間に合っても、預け荷物の積み替えが間に合わない可能性があります。
ロストバゲージは、乗り継ぎ時の積み替え工程で起こりやすいトラブルです。とくに大規模空港や混雑しやすい空港を経由する場合は、移動距離が長く、荷物の処理にも時間がかかることがあります。
また、前便が遅延した場合、もともとの乗り継ぎ時間が短いほど荷物の積み替え時間も不足しやすくなります。安さや到着時間だけで航空券を選ぶのではなく、乗り継ぎ時間に余裕があるかも確認しましょう。
旅先でのロストバゲージを防ぐには、空港内で荷物が次の便へ積み替えられる時間を確保することが重要です。乗り継ぎに2時間以上のゆとりを持った計画なら、荷物トラブルのリスクを抑えながら、次の目的地へ向かいやすくなります。
空港でやるべきロストバゲージ対策

空港では、チェックイン時の確認や乗り継ぎ時のひと手間で、ロストバゲージのリスクを下げられます。ここでは、チェックインカウンターや経由地でやっておきたいロストバゲージ対策を解説します。
- チェックインカウンターで荷物の行き先を自分でもチェックする
- 経由地の空港カウンターで荷物の確認をする
チェックインカウンターで荷物の行き先を自分でもチェックする
手荷物を預けたら、渡されるクレームタグ(手荷物引換証)を必ず受け取りましょう。原本をなくさないよう保管したうえで、スマホでも撮影しておくと安心です。
ロストバゲージが起きた際、クレームタグの番号は荷物の捜索や補償手続きに必要になります。番号が確認できないと、航空会社への問い合わせや手続きに時間がかかる可能性があります。
また、荷物に付けられたタグや手元の控えに印字された最終目的地の空港コードが正しいか、自分でも確認しましょう。行き先の都市名だけでなく、「LHR」「CDG」「JFK」などの空港コードまで見るのがポイントです。
さらに、預けた荷物の個数と、受け取った控えの枚数が一致しているかもその場で確認してください。スーツケースを2個預けたのに控えが1枚しかない場合、後から荷物を探す際に手続きが複雑になる可能性があります。
乗り継ぎがある場合は、荷物が最終目的地までそのまま運ばれるのか、経由地で一度受け取る必要があるのかも確認しましょう。英会話が不安な場合は、スマホに以下の英文を表示してスタッフに見せるだけでも構いません。
Is my baggage checked through to my final destination?
(私の荷物は最終目的地まで預けられていますか?)
チェックイン時に荷物の行き先と控えを確認しておけば、誤送や手続き漏れに早く気づきやすくなります。
経由地の空港カウンターで荷物の確認をする
乗り継ぎ空港に到着したら、時間に余裕がある場合はトランスファーデスクや搭乗ゲートで預け入れ荷物の控えを見せ、荷物の状況を確認してみましょう。
すべての空港や航空会社で詳細な積載状況を確認できるとは限りません。しかし、乗り継ぎ時間が短い場合や前便が遅延した場合は、早めに相談しておくことで不安を減らせます。
経由地で確認したい場合は、以下の英文をスマホで見せると伝わりやすくなります。
Is my baggage on this flight?
(私の荷物はこの便に載っていますか?)
もしスタッフが確認できる場合は、システム上で荷物の状況を見てもらえることがあります。確認できない場合でも、到着後に荷物が出てこなかった際の相談先や手続き場所を聞いておくと安心です。
大切なのは、クレームタグをなくさず、荷物の行き先を自分でも確認しておくことです。空港での小さな確認が、ロストバゲージ発生時のスムーズな対応につながります。
英会話不要|ロストバゲージが起きた際の対処法

ここでは、ロストバゲージが起きた際に空港で行う手続きを解説します。英語でうまく説明できなくても、写真やメモ、必要な英文をスマホで見せれば対応しやすくなります。
- 税関を出る前に手荷物サービスカウンターへ直行する
- 写真とメモを見せて手荷物事故報告書(PIR)を記入する
- 航空会社にアメニティキットや費用の補償を請求する
- 海外旅行保険・クレジットカード付帯保険の遅延補償を手続きする
税関を出る前に手荷物サービスカウンターへ直行する
荷物がターンテーブルに出てこないとわかったら、まずは「Baggage Service」や「Lost & Found」と書かれた手荷物サービスカウンターへ向かいましょう。専用カウンターは通常、ターンテーブルがある荷物受取エリアの近くに設置されています。
税関ゲートを抜けて到着ロビーへ出ないようにしてください。セキュリティの関係上、一度一般エリアへ出ると荷物受取エリアへ戻れない場合があります。
後から問い合わせることもできますが、現地でPIRを作成していないと、捜索や補償申請がスムーズに進まない可能性があります。荷物が出てこないとわかった時点で、その場で手続きすることが大切です。
カウンターでは、以下を手元に用意しましょう。
- 搭乗券
- 預け入れ時に受け取ったクレームタグ(手荷物引換証)
- パスポート
- 滞在先ホテルの住所・電話番号
英語で説明するのが不安な場合は、スマホに以下の英文を表示して見せれば問題ありません。
My baggage did not arrive.
(私の荷物が届きません。)
写真とメモを見せて手荷物事故報告書(PIR)を記入する
手荷物サービスカウンターに到着したら、手荷物事故報告書(PIR)の作成を依頼します。PIRは、預け荷物の遅延・紛失・破損などを航空会社に届け出るための書類です。
英会話に不安がある場合は、事前に撮影しておいたスーツケースの写真と、荷物の特徴をまとめた英文メモを見せましょう。色、サイズ、ブランド、素材、スーツケースベルトの有無などがわかると、スタッフも荷物を特定しやすくなります。
PIR作成時に発行される参照番号は、荷物の追跡や補償申請で必要になります。書類の控えや番号は、紙でもスマホの写真でも必ず保管してください。
PIRを依頼する際は、以下の英文を見せると伝わりやすくなります。
I would like to file a Property Irregularity Report.
(手荷物事故報告書を作成したいです。)
見つかった荷物は、航空会社が滞在先へ配送してくれるケースが多いため、ホテル名・住所・電話番号を正確に伝えましょう。翌日以降に別都市へ移動する場合は、全行程の宿泊先リストを見せると安心です。
配送先を伝えるときは、以下の英文を使えます。
Could you deliver my baggage to this hotel?
(このホテルに荷物を配送してもらえますか?)
航空会社にアメニティキットや費用の補償を請求する
ロストバゲージに遭った際は、アメニティキットをもらえるか航空会社に確認しましょう。航空会社によっては、歯ブラシや簡易的な洗面用品、下着などを用意している場合があります。
ただし、アメニティキットは必ずもらえるとは限らず、航空会社側から案内されないケースもあります。必要な場合は、自分から確認することが大切です。
カウンターでは、以下の英文をスマホで見せましょう。
Can I get an amenity kit?
(アメニティキットをもらえますか?)
また、現地で衣類や洗面用品などの生活必需品を購入した場合、航空会社に費用を請求できることがあります。補償額や対象品目は航空会社によって異なるため、購入前にカウンターや公式サイトで確認しましょう。
補償対象になりやすいのは、下着、最低限の衣類、洗面用品、充電器など、旅行を続けるために必要なものです。一方で、高価なブランド品や不要不急の買い物は対象外になる可能性があります。
費用請求では、購入日時と金額がわかるレシートが必要です。立て替えたレシートは捨てずに保管し、帰国後または航空会社の案内に沿って請求手続きを進めましょう。
海外旅行保険・クレジットカード付帯保険の遅延補償を手続きする
ロストバゲージや手荷物遅延に遭った場合は、航空会社の補償だけでなく、海外旅行保険やクレジットカード付帯保険の補償も確認しましょう。
航空会社の補償では不足する場合でも、保険で生活必需品の購入費をカバーできることがあります。ただし、補償額や対象品目、申請期限は保険会社やクレジットカードの種類によって異なります。
また、クレジットカード付帯保険は、旅行代金をそのカードで支払っていることが条件になる「利用付帯」のケースがあります。カードを持っているだけで自動的に補償されるとは限らないため、出発前に条件を確認しておきましょう。
申請時には、主に以下の書類が必要になります。
- 搭乗券のコピー
- クレームタグ(手荷物引換証)
- PIR(手荷物事故報告書)の控え
- 生活必需品を購入したレシート
- 保険会社やカード会社が指定する請求書類
なお、時計、パソコン、カメラ、電子機器、現金などは補償対象外になる場合があります。上限額を超える高額品も全額補償されるとは限りません。
金銭的なダメージを防ぐためにも、貴重品や壊れやすいものは預け荷物に入れず、必ず機内へ持ち込みましょう。ロストバゲージが起きたときは、PIRの控えとレシートを保管し、航空会社と保険会社の両方に確認することが大切です。
対策をして不安なく海外旅行を楽しみましょう

ロストバゲージは完全に防げるものではありませんが、事前に備えておけばリスクや不安を大きく減らせます。
出発前は、AirTagなどのスマートタグを荷物に入れ、古いバゲージタグや管理シールを剥がしておきましょう。あわせて、ネームタグを2カ所に装着しておくと、荷物の持ち主を確認しやすくなります。
また、スーツケースの写真撮影や英文メモの準備、1泊分の着替え・貴重品の機内持ち込みも大切です。荷物が遅れて届いた場合でも、最低限の備えがあれば落ち着いて対応できます。
万が一ロストバゲージに遭遇した際は、税関を出る前に手荷物サービスカウンターへ向かい、PIR(手荷物事故報告書)を作成してください。クレームタグや搭乗券、購入品のレシートは、荷物の追跡や補償申請で必要になります。
まずは、古いタグを剥がす、スーツケースを撮影する、必要な荷物を機内持ち込み用に分けるところから始めましょう。少しの準備をしておくだけで、海外旅行をより安心して楽しめます。
